[感想・考察]オリエント急行殺人事件がつまらないと感じるのはミステリーだと思っているから、「正義」の価値観を問う映画
ミステリー映画のあの、「ハッ!」とする感覚、たまに味わいたくなりますよね。ミステリーといえば?と言われると、アーサーコナンドイルやアガサクリスティが王道中の王道な気もします。
数々の作品が映画化されてきました。今回書いていくオリエント急行の殺人もその中の一つです。俳優陣が豪華だったので、目が飽きなかった作品だったなーと思います。
ちまたでは難しかった、つまらない、という声もあるみたいです。
早速、オリエント急行殺人事件の感想と考察(ネタバレあり)について書いていきます!
目次
数多くの映画、ドラマになってきた
映画オリエント急行殺人事件は、アガサクリスティの手によって1934年に書かれた長編小説が元ネタです。
その後1974年に一度映画かがされました。そのあとのリメイクが2017年版です。リメイクというと少し語弊がありますね。テイストを変えて題材は同じなので、リブートの方が近いでしょうか。
2001年にはアメリカで長編ドラマを放送、その後、名探偵ポワロ「オリエント急行の殺人」が原作出版75周年を記念して、テレビドラマ名探偵ポワロで、12シリーズ第3話目にオリエントが題材となりました。2010年にドラマになり、日本では2012年に放送されました。2015年には三谷幸喜verとして、新春スペシャルドラマ作品としてフジテレビから放送されています。
1974年(映画)
2001年(長編ドラマ)
2010年(イギリスでシリーズドラマ)
2015年(日本ドラマ)
2017年(映画)
こう見ると、読者に愛され続けている、長く残る名著なんだなというのがわかりますね。
俳優陣が豪華すぎて、ちょっと引いた
オリエント急行殺人事件の俳優陣はスペシャル豪華すぎて少し引いちゃいますね。笑
アクション映画やスパイ映画、マーベル作品が好きな自分からすると、うお!グリーンゴブリンいる!うお!Mがいる!て思っちゃいました。ウィレム・デフォーは本当に演技が上手ですよね。ジュディデンチもM同様に少し冷たい品のある女性を演じるのが上手です。
悪役にはジョニーデップが出演しています。当時はDV問題の前には、ハリポッターの新作でグリンデルバルド役で出たりと、ヒール役が多かったので、見ている側も自然と受け入れられました。個人的には、マッドハンターのイメージが濃いですが。笑
ミシェル・ファイファーもマーベルシリーズのアントマンに出てくるワスプ役ですし、デイジー・リドリーはスターウォーズのレイ役です。
なんだ?どうした?俳優豪華すぎないか、これ逆にキャラ喧嘩しないか?って思いましたが、そこまで心配することもなく見切れました。
ジョニーデップが引き立て役すぎた
ジョニーデップが出ているのに、出番はかなり少ないですし、これも結構衝撃ですよね。売れっ子を出していた方が客を呼べるし満足度が高まるはずですしね。
ジョニーデップは2015年にアンバーハードと離婚問題で、DVをしていたと動画が流出してしまい、イメージダウンがすごかったので、通常よりも安くキャスティングできたか、もしくは、映画関係者のつながりで出演許可が出て、世間の悪イメージをそのまま反映させて、ラチェット役として出たのかな?と思いました。
ポアロ役のケネス・ブラナーが主演兼監督もつとめ、彼は現在でも舞台に立ち、シェイクスピア俳優としても有名だったそうです。舞台俳優って、テレビや映画の俳優と違って、認知度よりも演技のうまさがより求められると思っていて、どっちがすごいとか優劣はありませんがね。
ケネス監督がジョニーデップならいいよ!ってキャスティング部にOKを出したんだと思います。彼が主演兼監督でなければ、ジョニーデップが出ることもなく、悪役だけキャラ薄いな、ていう自体があり得たと思うと、キャストを含めて映画は芸術だよね、やっぱ。
映画オリエント急行殺人事件(2017)はミステリーではない
映画オリエント急行殺人事件は長編女王と言われたアガサクリスティのサスペンス小説ですが、今回2017年に映画化されたオリエント急行殺人事件はミステリーではないと思いました。
ミステリーではないというミステリー…
とか複雑なことを言う気はありませんからご安心を。笑
なぜかと言うと、ミステリー好きな人からすると、ヒントがあからさますぎて、最初から全員が刺したんだなって言う線を出すのが早すぎるからなんですね。
しょっぱな船で怪しさを匂わせる、ドクター・アーバスノット(医師)と家庭教師のメアリ・デブナム。その後、ジョニーデップ演じるラチェットが死亡し、複数の刺し傷があると言う、残された部屋に多くの証拠、全員の嘘、序盤で「あーこれ全員が犯人なんだ」ってのがわかってしまいます。
でも違う結末もあるのかもしれない。と思い見ていると、やはり、ラチェットに殺されてしまったデイジーに関係している全員が復讐をするのに企てたことがわかります。
こんな簡単なミステリーなのか?と思ってしまいましたが、多分これミステリー映画ではないんですね。「正義」に関してミステリーを通して伝えている道徳映画なんです。
「正義」とは何か、人の脆さと向き合う
人それぞれによって正義とは違います
例えば、ポアロの正義は「あるべき姿であること」です。不完全さが目につき放ってはおけない性格であり、苦労もするが、犯罪捜査には役立つ能力だと明かしています。
そしてポアロにとっての、不完全さで引っかかるのが、証拠、秩序、筋道の3つです。
オリエント急行の重役であるブークにとっての正義は特にありません。その場の感情で流される一般市民を表しています。
オリエント急行に乗った殺人に関与している全員の正義は殺すまでが「人生を狂わせた元凶への復讐」でした。
ポアロの正義は一度死んだ
全員が犯人であることを知り伝えたポアロは、自分を殺せば犯人としてつき出さなくて済むために、殺せと言います。ポアロはここで試します。自分の正義は不完全さを無視せず、完全に戻すことのため、秘密にすると言うことはできないのです。
だから、いっそのことここで死ねばいい、殺せ!と、銃を出しますが、結果キャロライン・ハバード夫人が自殺を図ります。銃には玉は入っていませんでしたが、ポアロには十分でした。ここで、不完全さを我慢できないポアロの正義の価値観一度死んだのです。
そして、身を呈してまで、自分の身を投げ出して死のうとしたハバード夫人を見て、周りも気づいたはずです。復讐をしても幸せになどならない。と言うことを知り、自分たちが正しい行いをしたのだと言う思いをもう一度考えることになります。
ポアロはオリエント急行であったことに目を瞑ることにしました。あとは乗り合わせた全員が自分の正義に従い行動することを期待して、その場を後にしました。
正しいと思うことをすることが「完全さ」
どんな悪人であれ殺しは良くない
魂が砕け散る
と言うような話がありました。不完全さとはなんだったのか、おそらく全員の魂だったんだろうなと思います。殺しをしてしまい、嘘というよりも、全員に不完全さが宿ってしまった。それをどう消すのかはわからないけれど、人を殺したことに対して正義を遂行したのだと強く思い込んでいたのでしょう。
ポアロは正義とはいえど、人殺しは良くないと思う、だがこの場で言う正義がなんなのか私もわからない、なぜなら私は手紙をもらっていたがアームストロングを助けられなかったから。
正義とは、己が正しい、完全であると思うことであり、そう思えない違和感があるときは違和感に従い行動をするべきである
と言う道徳映画だったんだと思いました。
まとめ
映画オリエント急行殺人事件がミステリーだと思えば、確かにつまらない、駄作だ、と思ってしまったかもしれません。表現が露骨で、不自然さばかりが目立つ映画でした。
がしかし、これが道徳映画だと言われたら、ハラハラしつつ、ミステリー要素もあり、うざったくない道徳映画で、正義とは何かを考えさせてくれる良き映画だったのではないかと思えます。
俳優陣が豪華であった点も、なんか余計に不自然さを出してしまった原因かもしれませんね。もう少しマイナー俳優陣でも見てみたかった気もします。
ミステリー映画じゃないんだよ?実は、と言って人に勧めてみてください。笑