ダークナイト、インターステラーなどを手がけているクリストファーノーランの考察捗る映画[インセプション]。
一度、二度、いや三度見てもわかりづらい映画の代名詞といえばインセプションが上がる。がしかし、難しいのにも関わらず、見ていられる、何が起きているのかの理解はできる、だが説明するのが難しいのだから、傑作という他ないのです。
インセプションのわかる限り基本的なこと、結末への考察などを書いていきます。
目次
インセプションのあらすじ
他人の夢に入り込むことで、潜在意識の中から情報を盗むことのできる主人公コブ(レオナルドディカプリオ)はコボル社から依頼され、サイトー(渡辺謙)の夢へ入り込みます。本来夢とは気づかれづに情報を渡してしまうが、サイトーは訓練されているために夢と気づきコブたちを追い出します。失敗したコブたちはコボル社から追われてしまうことになり、行き場がなくなりそうになる。
そこへ、サイトーから情報を抜き取るのではなく、情報を植え付ける「インセプション」の依頼が舞い込む。事情があって入国し、子供たちと会うことのできないコブに対して、成功すれば、入国させると報酬をちらつかせる。
こうしてコブ一行は「インセプション」を実行することになる。
クリストファーが影響を受けた作品たち
幻想的な作風で有名になったホルヘルイスボルヘス著「伝奇集」の短編「Las ruinas circulares(円鐶の廃墟)」や「El milagro secreto(隠れた奇跡)」から着想を得たといいます。
構想中には、キアヌリーブスが主人公を演じ、社会現象と言えるほどに大ヒットした映画「マトリックス」や「ダークシティ」「13F」などの作品からも影響を受けたと言います。
当初はホラー映画として製作される予定でしたが、脚本執筆中にダークナイト三部作の撮影があり、インセプションをよりスケールの大きな映画にしたいという気持ちがうまれ、脚本が完成するまでに8年間の時間を要したそうです。
クリストファーノーラン自らが20年をかけて書き上げたと言われるシナリオだけあってかなりの力が入っています
インセプションの基本的なルールを復習
夢
インプションの中では夢に入る技術が確立してあり、夢へ侵入ができます。
夢は何層にも入ることができ、第一層目で夢に入り、その場で夢を見れば第二層、第三層と深い階層へ入ることが可能です。第一層目よりも二層目、二層目よりも三層目の方が時間が長くなります。
夢の中で死ぬ、もしくは「キック」することで夢から現実世界へ帰ることが可能です。
夢の中で情報を抜き取ることがエクストラクション。情報を植え付けることがインセプションです。潜在意識を強化することで、夢に入ってきたものを攻撃し、殺し追い出すこともできます。
キック
寝ている時でも、人間の機関は機能しているので、平衡感覚を脅かすことによって、目を覚ませます。目を覚ます行為を「キック」と呼んでいます。決して蹴ることではありません。笑
ドリーマー
夢の世界は一人だけではなく、複数の人と共有が可能です。ただし、夢の主は一人しかなれません。夢の主をドリーマーと言います。夢の主が死んでしまう、キックされてしまう場合には夢の世界は崩れ、一緒にいたものも現実世界へ戻ってしまいます。
設計士
夢の世界の設計担当です。
現実世界との境界が曖昧になってしまうと混乱してしまうので、現実世界のイメージ通りに設計はしてはいけません。想像から生まれた場所、建物、人物でありながらも、現実同様と感じさせつつ、複雑な構造にして追い出されないようにするなど、高度な能力が必要です。
夢の設計には、遺伝学者ライオネル・ペンローズ&数学者ロジャー・ペンローズ親子が考案した「ペンローズの階段」通りに設計することもでき、夢の中に出てくる人物を惑わすことができる。
偽造師
他人になりすます役。現実世界で行動を見張り、一挙手一投足をコピーし、完璧に演じることで、夢の中でもその人物になりきることができる。
そのために、相手からすると、親しい人間に見え、思わず近しい人にしか言わないことを漏らしてしまうこともある。
調合師
夢の世界の層が深くなればなるほどに、敏感になり起きやすくなってしまう。そのために、鎮静剤を使い長い間夢へ潜り込むことができる。
調合師が使った鎮静剤を使うと、通常の夢と違い、死んだ場合には起きずに奈落へ落ちてしまうデメリットもある。
トーテム
夢なのか、現実なのかを判断するための道具。
自分だけが知っている種がある必要がある。例えば他人にその道具のタネがバレてしまうと、他人が想像し創造してしまうので、夢と現実かが判断できなくなる。
コブの場合はコマで、コマの感触、劇中では回り続けるか倒れるかによって夢か現実かの判断をしているように見える。
夢の多重構造の期間
インセプションの劇中では夢の中で夢にもぐり、さらに夢にもぐり、と場面が変わる。そのために、夢の多重構造による時間の流れについて知っておくとわかりやすくなる。
夢の中では、時間は20倍になる。
つまりは、現実世界では10時間だったのが、第1層では1週間、第2層では6ヶ月、第3層では10年近く、といったように、乗数となっていく。
劇中の夢の流れについておさらいしておこう。
劇中の夢の流れ
ロバート・フィッシャーにインセプションする作戦会議では、
- 第一層:父との関係を提起
- 第二層:自分で何か作りたい
- 第三層:自分の道を進め
と順々に植え付けていくことだった。がしかし、第1層でのコブの潜在意識による邪魔、ロバートが訓練したことによって夢がドリーマーたちを追い出そうとすることなどイレギュラーが発生してしまい、計画が狂っていく。
第一層目
場所:ロサンゼルス
ドリーマー:ユスフ
夢の共有メンバー:コブ、アーサー、アリアドネ、イームス、ユスフ、サイトー、ロバート
ロバートに遺言があること、そしてパスワードを植え付けること、深層にいった際に金庫を開けるためのパスワードを自ら押したように見せかけるために、浅い層から特定の数字を覚えてもらうように仕掛ける。
また、遺言に大事なことが書いてあると言い、自らの意思で奥へ行くきっかけを作る。
第二層目
場所:ホテル
ドリーマー:アーサー
夢の共有メンバー:コブ、アーサー、アリアドネ、イームス、サイトー、ロバート
夢の中であることを気づかせて、焦って混乱しているロバート前へ、裏切り者であると言われた「ブラウニング」がたまたま部屋へくることで、さらに混乱し、さらに深い夢へ入るきっかけを作る。
第三層目
場所:雪山の病院
ドリーマー:イームス
夢の共有メンバー:コブ、アリアドネ、イームス、サイトー、ロバート
守られているロバート父の病室にある金庫を開けるために奮闘をする。
インセプションの虚無とは何なのか
虚無は夢のさらに奥の奥の奥(無限)であり、現実世界では寝たきり状態、植物人間であり、夢が現実世界となってしまう状態を言います。
夢は多重層になればなるほどに時間の流れが早くなってしまうので、何重も奥へいった場合には数十年がたち、もはや現実なのか夢なのかの区別がつかなくなるということです。
また、虚無の場合は意図的にドリーマーや設計士がおらず、自らの意思ではなく落ちていくので、境目がわかりづらくなってしまうために、現実世界へ戻る努力もしない、というわけです。
劇中では虚無は2回出てきます。コブの虚無とサイトーの虚無の二回登場をします。
最初の虚無はコブの虚無です。
コブの虚無では、コブがドリーマーであり、設計士であるために、昔モルと過ごしていた空間が反映されています。
第三層で亡くなってしまったロバートは虚無へ落ちてしまい、三層へ戻すために、アリアドネとコブは虚無へ向かいます。虚無は崩れ落ちていく街のような世界観であり、コブは見覚えがあるかのような顔をします。
一度目の虚無は昔コブがモルと過ごした場所に似ていました。そのためか、モルとロバートの居場所をすぐに当てることができました。
サイトーの虚無ではサイトーがドリーマーであり、設計士である空間に、コブが紛れ込んだということになります。
そして、サイトーの虚無ではコブは記憶をやや失っていますが、途中で思い出して、サイトーとともに帰った(??)ような描写となっています。
コブはモルと50年夢の中で過ごしたと書いてありますが、これは虚無ではなく夢の多重層であり、ドリーマーと設計士はコブ(おそらく)が兼ねています。そのため意思があったので、老けてしまったサイトーとは違い、歳を取っても現実世界へ帰ることができました。
インセプションラストの展開は現実?夢?
インセプションのラストの展開はハッピーエンド、に見えますが、どちらかわからない、という描写で終わります。
まず、ロバートの任務を終えたコブは、虚無から帰ったサイトーからの報酬で、入国が可能になります。入国をしたコブは実家へ戻り、子供たちへ会いました。
そこで現実かどうか確かめるために、コブはトーテムを回しますが、トーテムが倒れるか、倒れないかを見る前にコブは子供達を抱きしめに行きます。
そこで映画は終わります。
つまりは、現実か夢なのか、どちらかはっきりせずに映画は終わってしまうのです。これが何を意味するのかはみなさんが感じるそれぞれが答えでしょう。考えられるコブの心境はいくつかあります。
・もう疲れてしまった
・夢であっても現実であっても良い(前向き)
・怖かった
などなど。
映画の流れで言うと一番考えられるのは、「子供達を早く抱きしめたかった。」これが有力説です。
コブはモルを殺してしまった容疑で国を出なければなりませんでしたが、子供達の顔を見ずにこっそりと逃げ出します。そして逃げ出したことを非常に後悔しています。同じくモルにインセプションをしたことも後悔しており、次にそういったタイミングが来た時には、自らの保身に走らずに、ありのまま、したいようにしよう、こう思っていてもおかしくありません。
そのために、子供達とやっと会えたコブは、トーテムが倒れようが、倒れまいが、今は子供達を抱きしめることに決めていたのだと思います。後悔をしないように、今を生きると決めたコブの答えがあの行動で描かれているわけですね。